日本の企業との対話の場に参加しました

2015/7/13

2015年7月3日(金)に東京にて開催された「ニッポン CSR コンソーシアム 2015 ステークホルダー・エンゲージメント・プログラム」(主催: 経済人コー円卓会議日本委員会)にてGender Action Platformの大崎が発表しました。 

このプログラムは、企業がその活動においてグローバル基準の人権デューディリエンス(Due diligence: 正当な注意義務及び努力)を履行していくことを目指して、NGOや他の業界企業とともに人権課題について議論していく場として2012年から毎年開催され、今年で4回目を数えます。 

7/3は企業のCSRご担当者・約70人とGAPを含むNGO、10団体が参加し、熱気ある議論を繰り広げました。

前半は業界毎に、企業から取り組み目標を発表。ジェンダーに関して様々な業界から採用・従業時に、性別・性的指向や国籍の違いにより、研修・トレーニング、昇進面において不平等な扱いを受けないようにしていくことを目指していきたい旨などが語られました。

後半では、企業の発表に応える形で、各NGOがコメント、トップバッターとしてGAP大崎より次の3つのメッセージが伝えられました。




1. 女性の人権に関しては、「日本はグローバル・スタンダードに追いついていない」ということを認識することが最初のステップです。 

例えば、アジア・中東・アフリカの途上国。  
   理系・工学系の技術者・専門家、IT技術者、経営者、政治家、行政機関の管理職に占める女性割合が日本よりも格段に高い国もたくさんあります。つまり、行政や国政の場で、政府の規制枠組み(regulatory framework)や制度作りの意思決定に関与している人たちの中には「女性の人権」に目を光らせている女性たちが多くいるのです。  
   また、日本には、メイド喫茶のような男女の主従関係を強調するビジネス形態や電車等の公共空間に女性を性的イメージで捉えた広告(雑誌グラビアの中吊り広告等)など、国際常識からすると「女性蔑視」と定義づけられるビジネスや広告が日常的な風景になっています。パキスタンのような女性差別の激しい国を含め、海外から来た女性・男性たちにも指摘されているところです。まずは、日本で「女性の人権」に対する意識が希薄であるという事実を認識することが必要です。


2. 女性の人権に配慮し、ジェンダー平等を推進する形で事業を展開するためには、「ジェンダー分析」が必須です。

ジェンダーの視点とは、「人々の中には男性と女性がいること、男性と女性は家庭内や地域や社会・経済に置ける位置づけや役割分担が異なること、従って、男性と女性は異なるニーズを有していること」を前提として、事業を計画・実施・評価することです。外国人、労働者、移民、技術者、経営者、消費者、クライアント、子どもと男女一緒くたにしがちですが、それぞれの属性に男性・女性(男児・女児)がいて、置かれている状況とニーズが違います。開発支援では、それらの男女間の違いを明らかにする「ジェンダー分析」が必須とされています。たとえば、農業研修に男性も女性も同じように参加できるように、女性の生活時間を調査し、参加しやすい時間、場所等を決めていきます。  

   企業の取り組みにおいては、① ジェンダー分析をして性別役割分担(例:家庭内でのケアワーク)や生活時間の違いを洗い出し、採用・人事評価・労働環境の整備や、事業本体のマーケティング、企画、サービス供給に活かしていくこと、② その国の法律を把握すること(暴力、人権、労働、家族法等)を徹底すること、③ 安全に関しては、特に女性特有のリスク(=暴力被害)に注目し、男女別で女性の安全とプライバシーが守られるトイレの設置等、職場敷地内や通勤時の安全確保を徹底していくことが望ましいでしょう。採用、昇進、人事評価における女性差別とは具体的に何を指し、何が不平等・差別を生み出すのか?を具体的に明らかにし、組織で共通認識を確立するためには当該国・当該地域のジェンダー分析が不可欠です。


3. 女性の人権の保護は、単に「倫理的行動」ではなく、「経済的に合理的な行動」でもあります。   

女性の人権の保護は、企業の社会的責任ですが、現地の女性たちは潜在的な人材であり、現地の市場・購買層の拡大の担い手/エージェントです。女性の人権に配慮し、ジェンダー視点を踏まえた事業展開をすることにより、現地の女性経営者、起業家、マイクロファイナンスの利用者、そして消費者により効果的にリーチアウトできるようになります。アジア・アフリカには女性の起業家が多数いるほか、女性たちによるマイクロファイナンスも盛んです。こうした女性たちとパートナーシップを組んでいくことはビジネスの拡大につながっていきます。国連グローバル・コンパクトと国連ウィメンが2010年に策定した「女性のエンパワーメント原則」(Women’s Empowerment Principles)に署名している企業の取組みを含め、世界中に先行事例があるので、参考にすることをおすすめします。 

 参考資料: 女性のエンパワーメント原則(WEPs) 


GAP大崎に続いて各NGOからの発表があり、ジェンダーに関わるものでは次のようなコメントがありました。 

  • こどもの人権の観点からみると、養育者が子育てをしやすい働き方を保障することが大切。柔軟な雇用、子育てがしやすい雇用については、産業横断的に考えて頂きたい。(セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン)
  • 「セクシャル・マイノリティ」については差別の項目で各会社が入れたことについては評価。会社の人事制度の中で実現していくなど、具体的な取り組みを求めます。(レインボー・アクション)
  • 今年、「国家戦略特別区域法及び構造改革特別区域法の一部を改正する法律案」が閣議決定され、来年度から東京、大阪の特区で「外国人の家事支援人材」受け入れがはじまる見込み。しかし不明確な点が多く、世界で大きな問題になっていることが日本で起こるかもしれないので今後もウォッチが必要。(移住連・移住者と連帯する全国ネットワーク)

後半では経済人コー円卓会議日本委員会の方や有識者から、現在の国際的な潮流と日本の企業に求められていることについて包括的なお話がありました。

  • ビジネス・人権資料センターの高橋日本代表からは「オリンピックが迫るなか、日本の企業は国際基準からみて、大変厳しい目で見られる。『日本では今までこうやってきたから』という言い方は通用しない。」と述べ、ほかの企業がどうしているのか、最低水準に収まればよいというような「横並び意識」や、人権の観点から個別の対処をしていく際に「特別扱いはよくない」というような「画一的な思考」から脱却しなければならないことを強調しました。
  • 経済人コー円卓会議日本委員会、石田事務局長からは、人権デューディリエンス、今やイギリスでは法制化、オランダに至っては世界最高水準の人権デューディリエンスを企業が履行するように政府がプッシュしており、これにより、オランダが世界に恥じないブランド力を確立しようとしているなど、世界的な潮流となっていることが述べられました。また、企業が想定しない形で人権リスクが引き起こされることは必ずあり、「救済措置」はとても重要、その準備として日頃からステークホルダーとして権利者を代弁するNGOと関係をつくって、話し合いや情報収集をし、何か起こった時にはNGOから意見をもとめ、さらにパブリックコメントを求めてオープンに対処しておくことが企業にとっての正当性の担保でありアカウンタビリティである、という話がありました。

折しもG7 エルマウ・サミット首脳宣言(2015年6月8日)では、「責任あるサプライチェーン」が強調され、グローバリゼーションにおける役割として、G7諸国には世界的なサプライチェーンにおいて労働者の権利と労働条件および観光保護を促進する重要な役割があること、国際的に認識された労働、社会及び環境上の基準と原則が世界的なサプライチェーンに適用するため努力すること」が謳いあげられています。

GAPとして、グローバルな知見と日本国内のジェンダー状況の知識を活かして、今後ともこうした企業との対話の場に参加していきたいと思います。

また、ソフィア研究所では、人権デューディリエンスを推進する企業に対してジェンダーの分野でのコンサルティングサービスを行います。 詳しくはソフィア研究所のWEBページをご覧ください。



記事執筆: Gender Action Platform プログラム担当 高橋聖子